1.5 交流(AC)テクニック(ACV、SHACV)
正弦波の交流テクニックは本質的に2つに分類されます。交流インピーダンス法では、直流ポテンシャル( 典型的にはレドックスポテンシャルに) は一定に保ち、小さい振幅の交流電位(ある範囲の可変周波数)が印加されます(図19)。
第二高調波交流ボルタンメトリー法は交流インピーダンス法のバリエーションの1つです。周波数を一定にして、直流ポテンシャルをゆっくりと変化します(図20。図19と見かけ上、変わりません)。作用電極の表面において酸化あるいは還元された種の濃度を変えるために直流ポテンシャルが使われます。
そしてこれらの濃度に摂動を与えるために交流ポテンシャルが重畳されます。交流ポテンシャルの効果はredox ポテンシャルにおいて最も大きくなります。従って、ACV における交流電流応答はピーク波形の曲線になります(図21)。
交流電流応答は電子移動速度に依存しますので、交流ボルタンメトリーは基本的に電極過程の反応速度を調べるために使われます。これらのテクニックは同じく電極反応生成種の継続して起こる均一系の化学反応を調べるるために使われます。しかし他のテクニックは(例えば、サイクリックボルタンメトリー、クロノクーロメトリー)この方法より優れています。界面領域の等価的容量により、印加された交流ポテンシャルと交流電流応答間に位相差が生じます。異なった位相角で交流電流を測定するのがしばしば有用です。
理想的な可逆系の位相角45 ゜に対して擬可逆系(遅い電子移動の系)では、45 ゜より大きくなります。可逆性は実験のタイムスケールに依存しますので、交流周波数の増加はしばしば可逆系から擬可逆系への変化を生じさせます。(周波数)1/2 に対する位相角のコタンジェントのプロットは電子移動速度を算出するために使用されます。可逆系のピーク電流ip は次の式によって得られます。
n = 電子移動数、F = ファラデー定数(96500 C /eq)、A = 電極表面積(cm2)、
ω= 2 π x(交流周波数)、D = 拡散係数(cm2/s)、C = 濃度(mol/cm3) 、
△E = 交流ポテンシャルの振幅
系が可逆系から擬可逆系(そして更に不可逆系)へと変化するにつれて、ip は大幅に減少し、もはやω1/2に比例しません。(かつて不可逆過程は交流テクニックによって検出されないと言われていましたが、実際はそうではなく、ただそのような系ではピーク電流が小さくなります。)交流ポテンシャルに対する交流電流応答は直線関係にありません。
即ち、それは基本波とその高調波の和になります。セカンドハーモニック(第二高調波SHACV/P)の周波数応答がしばしば使われます。このテクニックによって得られる情報はACV/PやPSACV/ Pと同じです。加えるに、容量性電流の除去はより効果的であり、タイムスケールは短くなります。SHACV は電気分解された時、迅速に反応する種の酸化還元電位測定に使用されてきました。(サイクリックボルタンメトリー等に比べてSHACV のタイムスケールが短いので、電荷移動後に起こる化学反応の影響が軽減されます。)図22 にSHACV の典型例を示します。