1.8 バルク電気分解法(BE)
バルク電気分解法(BE)の原理は非常に単純です。もし酸化された分子種のみが最初に存在するなら、ポテンシャルを速やかに還元を起こすに十分な負の値に設定し、還元種のみが溶液に存在するまでこの値を維持します。BE 実験中に通った総電荷(Q)はファラデイー法則を通して最初に存在する酸化種のモル数(N)と分子当たりの電子移動数(n)と関連づけらます。ここでFはファラデイー定数(96,500C/ モル)です。従って、もしn 或いはNのどちらかが既知ならば、一方を算出できます。BE は分析と合成両方に応用できます。
BE に必要なセルはボルタンメトリー実験に必要とされるセルとは異なります(ボルタン
メトリーでは目的の電気化学活性分子のほんの一部が電解されるだけです)。大きい表面積(たとえば、白金金網或いは水銀プール)を持った作用電極と大きい表面積(例えば、白金コイル或いは金網)を持ったカウンター電極を使うことによって電解の速度は向上します。
作用電極へ出入りの物質移動速度を増やすため、溶液を撹拌します。 カウンター電極は作用電極と隔離し、カウンター電極の電解生成物と作用電極での電気分解種との干渉を防止します。作用電極とカウンター電極を隔離する材料の選択には注意を払わなければなりません。材料の電気抵抗が大きいと電解の効率に影響を及ぼす可能性があるためです。
BE実験の前に、ポテンシャルを選択します。還元の場合、理想的なポテンシャルは酸化還元電位(例えばサイクリックボルタンメトリーにより測定)より約-200mV にします。電解の速度は作用電極への物質移動速度によって支配されます。しかしながら他の電気化学活性物質(例えば、電解液、溶媒、溶液中の他の成分)の電解電位が近いと、酸化還元電位とあまり隔った電位を使用できない場合があります。
BE 実験中、 PCモニターの時計は実験時間を表示します。各データ取り込み時間毎にその間に通った電流とそれまでの総電荷がモニターに表示されます。1番目のインターバルの平均電流と各インターバルの平均電流比も表示されます。この比率は電解の程度を判定するための重要な基準になります。即ち、この比率が1%(バックグラウンド電流である残余電流)に達した時一般的に電解は終了とみなします。最終電流比はユーザーによっても設定できます(1% はデフォルト値です)。電荷 対 時間プロット(図37)または電流 対 時間プロット(図38)で結果が表示されます。