2.1.はじめに
微量物質を検出したり、物質の反応挙動を観察するために、電気化学測定は多く用いられている。
電気化学測定において、電極面積をミクロンオーダーまで小さくしていくと、電極への物質の拡散状態がリニアから球状に変化するため、単位時間、単位面積当たりに到達する物質量が増加する。その結果、観測される電流密度が増大し、従来の測定限界を凌駕することから微小電極が注目を集めている1 - 4。
そこで、その特長を生かしたバイオセンサーをはじめとする各種センサー5 、反応中間体の検出や反応過程の解析6、 高抵抗溶液や固体中の電気化学反応7 さらには有機電子デバイス8 - 10などの研究が行なわれている。
これらの微小電極を用いる電気化学測定の特長は以下のようになる。
1) 電極が小さいため、電流値が小さくなり、iR ドロップが減少する。
このため、電気抵抗の高い試料の測定が可能になる。
2) 電気二重層の充電電流が小さくなるため、高速でS/N比の高い測定が可能になる。
3) 拡散が等方的になるため、電流密度が高く、定常状態になる時間も速い。
近年、LSI 作製技術を応用することにより、単なる円盤や線状の電極ばかりでなく、複雑な形状の微小電極を信頼性よく、効率的に作製することが可能になってきた。
このため、電極形状や配置を工夫し、電流増幅や選択性などの機能が得られることが分かってきた。
ここでは、微小くし形電極を例に取り金属を剥離して(リフトオフ)くし形電極パタンを得る(C)。このパタン全面を絶縁膜で覆い、リード部分など絶縁膜で覆う必要のある部分に、再びフォトレジストパタンを形成し(D)、レジストに覆われていない絶縁膜を電極部分が露出するまでドライエッチングしてくし形電極を得ることができる(E)。
一方、基板全面を最初に電極材料の薄膜で覆った後、エッチング法により加工するプロセスを用いると、還元側での電位窓が広い炭素薄膜や、ITO(透明電極)など低温での膜作製が困難な材料も容易に微小電極に加工することができる11。