2.7.5液体クロマトグラフィ検出器への応用
液体クロマトグラフィの電気化学検出法(HPLC-EC)は発光や蛍光検出と並び高感度な方法として知られている。くし形電極を流れの系に入れて電気化学測定を行なうと、流れがレドックスサイクル数を低下させるため、静止系での測定に比較し効果が小さい。しかしながら、最近では生体試料の測定などで1ミリ以下の微小なカラムが使用され、その際には従来より極めて小さい流速が用いられるため検出器にくし形電極を用いると効果的である。
図21. 通常サイズ、及びマイクロボアカラムとくし形微小電極検出器の組み合わせにより得られたドーパミンのキャリブレーションカーブ ○ : 3mm 径カラム □ : 1mm 径マイクロボアカラム
図21. 3ミリ径のカラムと1ミリのマイクロボアカラムにくし形電極検出器を接続して測定した時のドーパミンのインジェクション量と電流値の関係を示す。微小カラムで低流速で測定することによりくし形電極検出器では大きな電流値が得られている。
従来、このような薄膜形の微小電極検出器は金、白金などの金属が用いられてきた。金属は微細加工に適するが水素や酸素の還元に対する過電圧が小さいためクロマトグラフィ検出器などに使用する場合還元側の感度が低いなどの問題点があった。
最近、我々は有機化合物の熱CVD法とその微細加工プロセスを確立し、ミクロンオーダーのパタンを有する炭素くし形電極を作製することができた。
この電極をクロマトグラフィ検出器に使用することによりドーパミンに対して濃度100pM(絶対量1fmol 以下)の低い検出限界を得ることができた。