資料室


1-3 印加電圧波形

電気化学 測定法の1つ、クロノクーロメトリーはセルにかける電位をステップ状に変化させて行ないます。
電位波形は図1-1Aに示されるものです。初期電位EiからEsへ階段状に変化させます。

  • Eiを電解が起こらない電位に選び、Esは酸化または還元が起こる電位を選びます。
  • Esで終わる実験はシングルポテンシャルステップクロノクーロメトリーと呼び、ダブルポテンシャルステップクロノクーロメトリーでは電位を第3の値Efに変化させます。
  • Ei とEf は同じ値に選ぶ場合が多いです。EiからEsへの変化をフォワードポテンシャルステップ、EsからEfをリバースステップと呼びます。
  • Esを電解が起こる電位に選んだようにEf はEs 期間中の生成物を電解するような電位に選びます。
  • クロノクーロメトリーを理解するにはステップ状の電位をかけた時、電極界面の濃度分布がどのようになっているかを考えるとよいでしょう。
  • ネルンスト式は電極電位と、電極表面における可逆酸化還元系の濃度間の関係を表わします。

    次の式(1)の酸化還元系のネルンスト式、および式(2)で与えられます(25°C)。


O + ne ⇄ R 式(1)


ccq1.jpg式(2)


fig1.gif
図1-1 クロノクーログラム

ここでEは電極電位、EO RO は標準酸化還元電位、n は反応電子数,COO、CROはそれぞれ酸化体、還元体の表面濃度です。
式(2)から電極電位が変われば表面濃度比CRO/COOが変わることがわかります。変化は電極表面での酸化体の還元または還元体の酸化が伴ない、結果として回路に電子の流れ即ち電流が流れます。
表1-1に標準電位からの電位変化に応じてCRO/COOがどのように変わるかを示しました。500 mV以下の電位変化で表面濃度比が大きく変わることがわかります。

CRS/COS E(mV)
n=1 n=2
1/10,000 236 118
1/1000 177 88.5
1/100 118 59
1/10 59 29.5
1 0 0
10/1 -59 -29.5
100/1 -118 -59
1000/1 -177 -88.5
10,000/1 -236 -118


表1-1 可逆系における標準酸化還元電位からの電位変化 E と表面濃度比CRS/COSの関係


目次:クロノクーロメトリー(電気化学 測定テクニック)

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