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1-4 濃度ー距離(C-d)プロファイル

電気化学 測定テクニックの1つ、クロノクーロメトリーにおいて、ポテンシャルステップに伴なう表面濃度の変動は電極近傍に濃度勾配を作ります。勾配は図1-2のような濃度−距離プロファイルとして表わされます。例えば、1 mMの酸化体(O)と支持電解質を含む溶液を考えます。EiをOの還元が起こらないくらい、EO,ROに対して十分正(陽)に選びます。図1-2Aのa はOの濃度が表面から溶液沖合に向けて一定であり、一方図1-2BのaではRの濃度が一定(図では零とみなしうるくらい低濃度)であることを示します。ESは表面にあるOがすべてRに還元される、EO,ROに対して十分負(陰)に選びます。

ポテンャルステップESの結果、濃度勾配は図1-2A,b のようになります。濃度勾配は沖合から表面への酸化体の拡散の駆動力になり、時間と伴に c, d のように拡散層は沖合に延びます。Oが消滅した分 Rが電極近傍に蓄積され、Rの濃度勾配の時間推移は図1-2Bのb, c, d のように表わされます。Rは Oとは逆に電極から沖合に向けて拡散します。
いずれにしても高濃度側から低濃度側へ拡散します。ここで注意しなければならないことは図1-2のプロファイルを得るためには物質移動が拡散のみで起こり、対流が起こらないように溶液を静かに保つことが必要ということです。

ここでCRSが零になる十分正の電位(EO,ROに対して)Efにステップした時どうなるでしょう。式(2)を考えると比 CRO/COOは直ちに小さな値になることがわかります。
従って、フォワードポテンシャルステップの間に生成したRはリバースステップの間に再び酸化されてOへと戻ります。図1-2C,Dの濃度−距離プロフィルはRが一部、電極表面へ拡散して戻り、酸化されてOになることを示します。Rの残りは溶液中へ拡散して行きます。つまり、すべての O がR の再酸化によって回収されるということではないのです。

fig2.gif
図1-2.ポテンシャルステップによって起こる濃度−距離プロファイルの推移
A,B:フォワードステップ期の酸化体(O)及び還元 体(R)
C,D:リバースステップ期の酸化体(O)及び還元体(R)


目次:クロノクーロメトリー(電気化学 測定テクニック)

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