1-8 電気化学セルの評価
電気化学 測定テクニックの1つである、クロノクーロメトリーの有用な応用の1つは、使用する電気化学セルにおいて平面拡散(一次元拡散)が成り立つ時間幅の決定に用いられることです。
式(5)(1-6電荷応答のページ)は電極が平面であるという仮定と、さらに電位変化は瞬時に起こり、電気化学 活性種の電極表面への物質移動が拡散のみで起こなわれ対流などの寄与が無いという仮定のもとに求められます。式(5)からわかるようにQ/t1/2は一定です。
時間に対してこの値をプロットすると、図1-4のようになり、広い時間幅にわたって一定であり、この時間幅が平面拡散の条件の成り立つ時間枠を表します。長時間後の増加傾向は僅かな対流による寄与であり、おそらく振動の結果と思われます。そのような僅かな対流の寄与は十分、振動から保護したセルでも約1分後には測定にかかる程度になります。
増加傾向のもう1つの原因として 吊り下げ水銀滴下電極でおこる球面拡散の寄与が挙げられます。このような電極では平面拡散とみなせるのは約1秒までであり、その後は球面拡散が混ざってきます。短時間のところでは減少傾向がみられます。これはポテンショスタットの能力が完璧でなくセルの電位を瞬時に変えることができないために生じます。
補償できない電極間溶液抵抗がセルの電位変化に時間遅れをもたらします。従って、比CRO/COO は瞬時には変化しません。その結果、電位が設定値に達するまで電流値は理論値より、やや小さくなりQの値も小さめになります。セル電位変化に要する時間は典型的にはマイクロ秒からミリ秒程度です。この時間は補償できない電極間溶液抵抗をできるだけ小さくすることで短縮できます。参照電極と作用電極間をできるだけ近づけ、支持電解質濃度を増やし、電極面積を減らすことがセル応答の時間遅れを減らすのに役立ちます。