RRDE(回転リングディスク電極)とは
内側にディスク状の電極、その外側に同心となるようリング状の電極を配置し、一体となって回転する電極を使用します。電極表面の溶液は電極の回転運動の遠心力で外側に流され、それを補う溶液が回転軸を中心軸として電極に向かって流れます。このような強制的かつ定常的な物質輸送によってできる電極表面の拡散層の厚さは回転数に依存し、回転数が大きいほど薄くなります。ディスク電極での反応生成物は外側のリング電極で検出されます。
RRDEの歴史
RDE(回転ディスク電極)はV.G.Levichが1942年(今から65年前)にActa Physico. Chim.に回転電極について発表したのが最初のようであります。RRDE(回転リングディスク電極)については酸素の還元反応に関して、1959年に発表されたのが最初だと思います(J.Electroanal. Chem.,Vol.1、84頁、Frumkinら)。その後、アメリカのグループによって精力的に基礎および応用が進められました。
RRDEの特長
- 物質輸送速度を回転数で再現良くコントロールできる
- 定常状態を作ることができる
- ディスク電極での生成物をリング電極で解析できる
- 電極への物質輸送が均一である
- ディスク電極電位とリング電極電位の制御方法で様々な組み合わせができる
RRDEの代表的な応用例
燃料電池の場合:
燃料電池における利用は、量的には最も多いのではないでしょうか。そのうちでも重要なのはカソードでの酸素還元反応の研究でしょう。これは古くからの大きなテーマです。還元反応メカニズムを知ること、反応速度を速くすること(つまり、過電圧を下げること)の2つが主要な目的です。メカニズムの点では、反応中間体として過酸化水素が生成するか否か、生成することのチェックとしてRRDEはその検出手段として非常に適しています。主として使われているのは白金微粒子を担持したカーボン電極が多いのですが、コスト面からそれ以外の触媒系が探索されています。
腐食の研究の場合:
ディスク電位掃引につれて、腐食活性状態から不働態化状態に移るに従い、リング電流のプロファイルや値からディスク電極の溶解(例えば、どういう酸化状態で、例えば、鉄の2価か3価かとか)か皮膜の生成が起こっているかが識別できます。電位掃引が進むにつれて皮膜の酸化が進んだり、溶解したりする変化が追えます。その他、酸化皮膜(不働態皮膜)の安定性の研究、UPD(アンダーポテンシャルデポジション、腐食やメッキの研究と関係がある)の研究などがRRDEで有効であります。