電気化学測定に使用する参照電極の種類とその用途、選択方法についての基礎的な内容です。
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これから電気化学を始める方のための参照電極の基礎-その8:擬似参照電極とインピーダンス
ポテンショスタットは参照電極と作用電極の間の電位をコントロールするだけであって、作用電極に電流iが流れると、参照電極と作用電極の間の溶液抵抗Ruによる電圧の低下分i×Ruだけ設定電位は差し引かれて印加されることになる。そのためこの溶液抵抗を未補償溶液抵抗と呼んでいる(この結果、例えばCV上では見かけのピーク電位幅が広がることになる。この電位不足分を補償する便法として、予め参照電極と作用電極の間の溶液抵抗を見積もっておき、電圧降下分を上乗せした形で電位印加をするポジティブフィードバック補償を採用することはできる)。
未補償溶液抵抗を小さくするために、参照電極をできるだけ作用電極に近づけた方が得策である。そのためにルギン管という先端が細管になったジャンクションを余分に使うことがある。
いづれにしても、参照電極と作用電極の相対的位置関係によって溶液抵抗が変わることは望ましくない。参照電極を作用電極に対して常に同じ位置に設置することは大切である。ルギン管を使う場合でも活物質の拡散を妨げるほど作用電極に近づけてはいけないし、ルギン管自身によるインピーダンスの増加があることにも注意が必要である。
参照電極には電流を流さないとはいっても、電子回路系に組み込まれている限り微小電流は流れるわけで、参照電極自体のインピーダンスを考慮することは必要である。参照電極系のインピーダンスが大きくなると時定数が増大して(作用電極の二重層容量Cdlと参照電極のインピーダンスで決まる時定数)ポテンショスタットの応答を遅くする。またポジティブフィードバックを採用したときポテンショスタットを不安定にし易い。参照電極の液絡部は相当大きなインピーダンスを持つが(バイコールガラスで1M KClで500Ω~1kΩ、セラミックではもう少し大きい)、液絡部に何らかの析出が起こるとインピーダンスを非常に大きくするので特に注意が必要である。
非水系では銀イオン電極を使うのが一般だが、電位を特定するには内部標準を用いる必要がある。内部標準を使うのであれば、白金線をポテンショスタットの参照電極につなぐ、所謂、擬似参照電極方式でも一向に構わないことになる。白金線だとインピーダンスは小さいわけで、この点でも好都合であろう。
非水系におけるレドックス電位の表記に、水系の参照電極を基準にした例が多く見られるが(例えば、vs SEC 等と)、非水系と水系の液間電位については大抵の場合、記述がない。だから、文献上におけるこれらの比較は難しいといえる。
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