トップページ > 電気化学計測 > これから電気化学を始める方のための基礎

電気化学における基礎と応用を解説した内容です。
その他はこちら

その2:バイポテンショスタットについて

前回はポテンショスタットが原理的には2個のopアンプで構成できて、3つの基本的な機能(①作用電極の電位を参照電極に対して規制する。②作用電極に流れる電流を測る。 ③参照電極には電流は流さない)が成り立つこと、opアンプの働きを理解するポイント(2つの入力端は同じ電圧になる、2つの入力端インピーダンスは非常に大きいのでこれらの端子からopアンプ中に電流は出入りできない)について述べた。

その続きとして今回はバイポテンショスタットについて解説しよう。同じ検液中で2つの作用電極の電位を独立に規制する道具である。代表的な例は回転リングディスク電極(RRDE)であるが、その他には液体クロマトグラフィー検出器における2作用電極電気化学検出器(twin-Electrode LCEC)や場合によっては液液界面ボルタンメトリーにも使われるであろう。2電極を2台のポテンショスタットで独立に制御をできないかとの質問を受けることがあるが、これは無理。2つの電源を同一溶液に入れると相互干渉をしてしまい、電位の規制はできないでしょう。

オペアンプを使ったバイポテンショスタットの構成

図は5個のオペアンプを使ってバイポテンショスタットを構成したものである。作用電極1(W1)はop1とop2で電位コントロールされることは前回述べたと同様であり(前回では1個のopアンプのみであったが)規制電位はE1である。op4は引き算回路であり、E1とE2の差信号が出力され、op5の+端入力になる(差信号ΔE = E2 ─ E1)。前回述べ たように+端子と-端子の電圧は同じになるので、作用電極2に印加される電位はE2 ─ E1ということになる。E1は電極1に印加される電位であり、E2はこれとは全く独立に選ぶことが可能である。従って、電極2も独立にコントロールできることになる。このようにして例えば、RRDEではディスク電極とリング電極の電位を共通の参照電極に対して全く独立に任意の電位を印加することが可能になるわけである。

最後に2点。1つはボルテージホロワ-。opアンプ2がそれである。前段(opアンプ1)から信号を受ける+端子には他に繋がるルートはないので殆ど電流は流れない。─ 端子は参照電極に繋がるのみであるから電流は流れないがアンプ出力として電流を流すことはできる(対極Cに繋がっており電解電流となる)。電流を流さずして大きな電流を流すことを可能にしている、つまりインピーダンス変換をしている。ポテンショスタットでは頻繁に使われている。もう1つは引き算回路と足し算回路。引き算回路ではあまり入力信号間の相互干渉が無いという特徴を明瞭に理解し難いかもしれないが、足し算回路では足し算すべき変数が同一入力端子に繋がるので、その効能を納得し易い。足し算回路を有効に使う溶液抵抗の補償用のポジティブフィードバックについては次回にふれよう。

pdf資料はこちらからダウンロードできます(約110 KB)

line
トップページ電気化学 測定電極&アクセサリ光と電気化学分光分析お問い合わせ