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電気化学におけるレドックス電位についての基礎的な内容です。
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レドックス電位について(1)HOMO、LUMOについて

電気化学の目的の一つにレドックス電位を知ることがある。分子種に固有であり、物質の同定、定性に使われる。それではレドックス電位はどのように決まるかということになる。それがわかれば、目的とするレドックス電位をもつ物質の設計指針となるわけでもある。
物質(ここでは分子種を考える)は、とびとびの電子準位に下の準位(軌道ともいう)から、電子が占有され、占有された一番上の順位を最高被占準位(HOMO;Highest Occupied Molecular Orbital)、その上の占有されていない準位を最低空準位(LUMO;Lowest Unoccupied Molecular Orbital)と呼び、これらが分子種の反応に関与する準位となる。このため特にHOMO、LUMOをフロンティア準位とも呼ぶ。電気化学反応について言えば、酸化とはHOMOから電子を取り除くことであり、還元とはLUMOに電子を加えることである。電子準位は物質に固有だから、レドックス電位も物質に固有な値になるわけです。正式には標準酸化還元電位とか式量酸化還元電位とかいうべきものかもしれないが、ここではレドックス電位(レドックスは還元reductionと酸化oxidationを複合した用語)と表現する。分子種のレドックス電位はHOMO‐LUMOの位置によって決まるから量子力学計算により求めることが原理的には可能である。
しかしながら、定性的にレドックス電位がどのような要因で影響されるかを知っておくこともまた有意義であろう。このようなわけで以下に何回かに分けて述べる。

HOMO、LUMOがレドックス電位を決め、その変動がレドックス電位を変動させる。準位の変動要因は、レドックス中心(電子移動が起こるサイト)における電子密度、その周囲の電荷(プラス、マイナス、そのサイズ)が主で、その他に媒体の影響も加わる。
有機金属化合物を材料にして、定性的ではあるが思いつくままに触れてみる。先ず、レドックス中心(サイト)における電子密度の増減である。
例えば、置換基の影響でレドックス中心の電子密度が増えると(電子供与性の置換基)、準位が上昇し(不安定になり)、電位は負シフトをして酸化されやすく、還元され難くなる。一方、電子密度が減れば(電子吸引性の置換基により)この逆になる。
一例として、フェロセンの置換基としてアセチル基とメチル基を比較してみよう。前者は電子吸引性でレドックスサイトである鉄の周囲の電子密度を減少させ、後者は電子供与性で増加させる。その効き方は置換基の数にほぼ正比例する。フェロセンのレドックス電位はモノアセチル置換では0.25 Vの+シフト、ジアセチル置換では0.47 Vの+シフトになる。一方、デカメチル置換フェロセン(すべての水素原子がメチル基で置き換わった場合)では500 mVもマイナスシフトする。メチル基一個当たり50 mVものマイナスシフトになるのです。

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