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電気化学測定法である電気化学インピーダンス分光法(EIS)についての基礎的な内容です。
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電気化学インピーダンス分光法(EIS)について(6):3つの素過程からなる系を考える

時定数の異なる、3つの素過程からなる系を考えてみよう。等価回路とナイキスト・プロットを図1にあげる。3つの時定数はそれぞれ10-2、10-4、5×10-6秒である(時定数は並列のC×R回路の積で与えられることは既述)。それぞれの時定数が十分異なるので3つの半円弧が分離して識別できる。
半円の径がそれぞれの並列回路の抵抗の値Rに一致する。抵抗100Ωの過程が一番大きな円弧に対応する。時定数が10-2秒であり、一番長い素過程を反映して、一番低周波数側に現れている(前にも記述したがナイキストプロットでは原点に近い方が高周波数であり、低周波数になる程、原点から遠ざかる)。図では5×10-6秒の素過程が一番短い時定数を反映して、一番高周波数側に現れ、並列抵抗が一番小さな過程に対応している。真ん中の円弧は時定数が10-4秒の過程に対応する。容量Cの値は半円の頂点周波数(fmax)と抵抗値Rから式fmax=1/2πCRを用いて求められる。
電気化学 測定 図1.3つの継続して起こる素過程系のナイキストプロット(1)


3つの素過程からなっても、時定数が接近していると、図2のように、相互の分離は不十分になる。高周波数側の2つの時定数の比が4であり、図1の20に比べて小さく、若干の分離傾向は見られるものの分離は十分ではない。
これらの等価回路を求める作業では、その等価回路が実際の化学的、物理的現象と妥当に対応しているかを考えなければいけないが、その意味では、抵抗やキャパシタンス、ワールブルグインピーダンスは考えやすい。例えば、抵抗は、媒体そのものの抵抗、界面の電荷移動速度や溶液中や膜中、その他、種々の媒体中のイオンの移動速度の大小を反映している。電極における電子移動速度が遅ければ大きなインピーダンスに対応する。キャパシタンスは分極性の界面の形成、電荷の充放電等々で現れてくる。また、ワールブルグ項は拡散が関与する諸々の事象で姿を現す。幸い、これらの事象の時定数は、経験的な蓄積があるか、或いは、おおよそ推定できる。一方、CPEの方は、シミュレーションにより測定結果に合うモデルを組み立て、結果は出るので分かった積りにはなる。しかし、数学的にはnの選び方によってはキャパシタンスにも抵抗にもインダクタンスにも成りうるモデルであり、それだけに化学像、物理像の描きにくいものであることは認識しておく必要はあるだろう。
電気化学 測定 図2.3つの継続して起こる素過程系のナイキストプロット(2)


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