あ行 か行 さ行 た行 な行 は行 ま行 や行 ら行 わ行 A〜Z
あ行
用語 | 解説 | |
アグロメレート | PEMFCにおいて分散したカーボン微粒子(その表面にはナノサイズの白金微粒子が触媒として担持されている)の集合体。その表面は電解質溶液で覆われ、部分的に反応ガス通路が迷路状に入り組んでいる疎水性部が存在する。 | |
アノード | 酸化反応が起こる電極。負極とも呼ぶ。陰極になる。 | |
アルカリ型燃料電池(AFC) | アルカリ性電解質を用いる。キャリアーイオンは水酸化物イオン(OH-)。アルカリ性下では酸素還元反応は速いのでPt電極以外を使うことができるが、一方では炭酸ガスの存在が有害であるという得失がある。1960年代前半、アポロ計画で使用されて有効性が証明されたが、その後のジェミニ計画ではPEMFCに変更された。 電解質はKOHまたはNaOHで、電荷を運ぶイオンはOH-である。炭酸ガスの存在により生じる炭酸塩の溶解度が低くトラブルの原因になるのが難点。 電極反応は次式のようになる。 カソード反応 1/2O2 + H2O + 2e → 2OH- アノード反応 H2 + 2OH- → 2H2O + 2e オーバーオールは H2 + 1/2O2 → H2O である。 水がアノード側で生成する点がPEMFCと異なる(PEMFCではカソード側で水が生成する)。OH-がカソードからアノードへ、水がアノードからカソードへ移動する。電極活性はアルカリ性下で大きいが、システム自体のCO2耐性が低いのが大きな弱点である。 |
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イオノマー | PEMFCにおいてカソード、アノードにおける電極反応を円滑に進行させるために、電解質として加えられる溶解性の導電性高分子。 | |
イオン交換膜 | PEMFCで用いられる膜はプロトン交換性のカチオン(陽イオン)交換膜である。テフロン(ポリフルオロエチレンを骨格とする)ベースで側鎖にスルフォン酸基を有する高分子膜からなるので水素イオン(プロトン)が電荷を運ぶことができる。最近、アルカリ電池用にアルカリ性で安定に使用できるアニオン(陰イオン)交換膜の開発が活発化している。 | |
エタノール燃料電池(DEFC) | 酸性下では アノード極では CH3CH2OH + 3H2O → 2CO2 + 12H+ + 12e カソード極では 3O2 + 12H+ + 12e → 6H2O オーバーオールでは CH3CH2OH + 3O2 → 2CO2 + 3H2O 実際には反応は完結せず、酢酸やアセトアルデヒドの生成までしか進まない(4eどまり)。 アルカリ条件下では アノード極では CH3CH2OH + 12OH- → 2CO2 + 9H2O + 12e カソード極では 3O2 + 6H2O + 12e → 12OH- オーバーオールでは CH3CH2OH + 3O2 → 2CO2 + 3H2O しかし、現在のアノード触媒では上記の反応は完結しなくて CH3CH2OH + 4OH- → CH3COOH + 3H2O + 4e といったところである。 |
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エネルギー容量 | 燃料から獲得できるエネルギーを、重量当たり又は、体積当たりで表す。例えば、J/g、Wh/g、Wh/l、kWh/g、kWh/lなど(Jはジュール、Wはワット)。Wは仕事、hは時間、その積はエネルギー。エネルギー密度ともいう。 |
か行
用語 | 解説 | |
カソード | 還元反応が起こる電極。正極とも呼ぶ。陽極になる。 | |
ガス拡散電極(GDE) | PEMFCの場合では、カーボン微粒子に担持した触媒(白金がその代表)超微粒子からなるポーラス電極。親水性の電解質の部分的におおわれた領域と、気体(燃料および酸化剤気体)の通路となりうる疎水性領域に囲まれた微小空間が入り組んだ構造をなすと考えられている。燃料および酸化剤ガス相、触媒、電極が接触する界面を有する。電子伝導はカーボンが、イオン伝導は電解質が担う。 | |
過電圧 | 平衡電位で電荷移動が遅すぎるため余分にかけなければならない電位差を活性化過電圧(分極)と呼ぶ。その他、活性成分の移動速度が追いつかなくなることによる過電圧、オーム抵抗により生じる過電圧などがある。カソードにおける酸素還元反応による分極が燃料電池では一般に大きく、これを低減して高活性の触媒を得る研究が続けられている。 | |
寄生電流(parasitic current) | スタック構造に伴う、異なる単一セル間に流れる出力に寄与しない電流。 | |
クロスオーバー | DMFCにおいて燃料であるメタノールが、アノード極側から固体電解質膜を透過して酸素極(カソード)側に入ること。一般に燃料がカソード側に透過することをいい、電池の起電圧の低下を招く。 | |
コジェネレーション | CHPのこと。発電と、同時的に発生する熱エネルギーを総合的に有効利用して効率向上をめざす方向、仕組み。略してコジェネともいう。高温燃料電池(SOFC、MCFCやPAFC)において有効に適用される。 | |
固体イオン交換膜型燃料電池 | プロトン交換膜型;PEMFC 高分子電解質型;PEFC メタノール燃料電池;DMFC 電解質は側鎖にスルフォン酸基を有するテフロンをベースとする固体イオン交換高分子膜である(PEMFCとほとんど同じもの)。電荷を運ぶイオンはプロトン(H+)である。中、低温動作、低温起動、高エネルギー容量などの特徴から自動車用動力源として研究されている。 電極反応はカソードでは 1/2O2 + 2H+ + 2e → H2O アノードでは H2 → 2H+ + 2e しかしながら燃料の水素貯蔵、補給、インフラ整備などが依然として大きなチャレンジである。 |
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固体酸化物型燃料電池(SOFC) | 高温で使用。酸素イオン伝導性の固体電解質(YSZ)を使う。YSZは固体であり、漏れの心配はない点ではMCFCより安定といえる。 各電極における反応は アノード側 H2 + O2- → H2O + 2e カソード側 1/2O2 + 2e → O2- |
さ行
用語 | 解説 | |
酸素還元反応(ORR) | カソード極で起こる酸素分子の還元反応。4電子還元、酸素-酸素結合の解裂をともなう反応であるため、反応速度が遅く、大きな過電圧を生じ、起電圧の低下を招く大きな理由となっている。また2電子還元どまりで過酸化水素が生成する過程が部分的に生じる。過酸化水素は電解質膜を傷める作用があり、生成を極力抑えることが望ましい。白金が現在のところ最も速い反応を起こさせる触媒であるが、希少貴金属であり高コストになる。白金に代わる触媒の研究が活発に行われている。 | |
酸素極 | FCにおいて酸素の還元を起こす電極。カソード極になる。 | |
CO耐性 | 白金電極はCOにより被毒され易い。被毒されると触媒活性が低下する。これをCO耐性が低いという。 | |
触媒の被毒 | 燃料中の不純物(一酸化炭素COや硫黄)が触媒の活性サイトに結合して触媒の活性が失われること。 | |
水素極 | 水素の酸化を起こさせる電極。燃料電池のアノード極。 | |
水素貯蔵 | 燃料として水素の貯蔵法さらには供給方法(インフラを含めて)は燃料電池の実用化に向けての大きな問題点である。高圧タンク(ボンベ)、低温液化や他の化合物への吸蔵、化合物化などがあり、後者については現在進行形、虚実取り混ざった報告が続々現れているという状況である。 | |
スタック | 所要の起電圧を得るために単一セルを重ね合わせた積層構造のこと。 |
た行
用語 | 解説 | |
多孔性電極 | ポーラス電極のこと。電極の有効表面積を増やす目的で使われる。 | |
電気浸透流 | 固体イオン交換膜型(PEMFC、DMFCなど)ではプロトンの移動につれて、水和した水が移動すること。 |
な行
用語 | 解説 | |
ナフィオン膜 | テトラフルオロエチレン骨格の高分子でスルフォン酸基を有し、プロトン交換能があり、電気伝導性をもつ。 | |
燃料の改質 | 石油、石炭、天然ガス、バイオガスなどを触媒、化学反応などにより燃料の水素分子にすること。 | |
燃料電池(FC) | 化学エネルギー(物質の内部エネルギー)を電気エネルギーに変換する仕組み、装置。アノード(負極)側で起こる燃料(主として水素分子。他にメタノール、エタノール、ギ酸など)の酸化反応と、カソード(正極)側で起こる酸化剤(主として酸素分子)の還元反応を組み合わせて構成する電池。エネルギー利用効率を熱機関に比べて大きくできる可能性があることが特徴。 |
は行
用語 | 解説 | |
分極 | 電荷移動反応が遅すぎるため余分にかけなければならない電位差を活性化分極と呼ぶ。活性化過電圧ともいう。この他、拡散輸送に伴う輸送分極やオーム抵抗により生じる抵抗分極がある。 | |
分極曲線 | セル電圧と電流値をプロットした曲線。活性化分極、輸送分極、抵抗分極などにより電圧降下を示す。燃料電池の特性、性能評価に、先ず第一に必要な測定項目。 | |
フラッディング | PEMFCなどカソードで水が生成する場合、水があふれてガス拡散通路を妨げる程になる洪水状態。水分管理が重要な所以である。 | |
プロトン伝導 | PEMFCやPAFCでは電荷を運ぶのはプロトンである。 | |
ポーラス電極 | 電極酸化および還元反応の効率を上げるために表面積を大きくすることが重要である。そのためにポーラスにする。多孔性電極ともいう。カーボンクロス、カーボン繊維などがバックボーンに使われる。 |
ま行
用語 | 解説 | |
ミクロ流体型燃料電池 | 微小スケールの2つの(アノード側とカソード側)層流を利用する携帯型の小型の燃料電池。層流の直角方向には拡散による混合はあるが、電極に混合の影響が到達しなければ、交換膜などが無くても構わないという考え方。流す流体の液性(pH、燃料、酸化剤など)を目的に合わせて自由に選べる利点がある。 | |
水管理 | 固体高分子膜型のFC(PEMFC、AMFC、DMFC)ではカソードまたはアノード側で水が生成する。そのため水分過多になる場合がある。また膜の伝導性は水分含量に大いに依存する。そのため水分量の適切な管理が重要になる。 | |
メタノール燃料電池(DMFC) | PEMFCで用いると同種のイオン交換膜を使う場合(酸性の電解質)では カソード極側での反応は 3/2O2 + 6H+ + 6e → 3H2O アノード極側では CH3OH + H2O → CO2 + 6H+ + 6e オーバーオールでは CH3OH + 3/2O2 → CO2 + 2H2O メタノールのクロスオーバーと反応速度の遅いことが難点。 アルカリ性電解質下では電極反応速度は速いが炭酸ガスの存在、生成が溶解度の低い炭酸塩を作るのが大きな難点である。 アニオン交換膜を使うアルカリ型の場合は カソード極側では 3/2O2 + 3H2O + 6e → 6OH- アノード極側では CH3OH + 6OH- → CO2 + 5H2O + 6e オーバーオールでは CH3OH + 3/2O2 → CO2 + 2H2O |
や行
用語 | 解説 | |
溶融炭酸塩型燃料電池(MCFC) | 高温で使われる(600〜700°C)。電解質(LiKCO3)は高温の液体である。各電極における反応は アノード側 H2 + CO32- → H2O + CO2 + 2e カソード側 1/2O2 + CO2 +2e → CO32- オーバーオールの反応は他のFCと同じく、H2 + 1/2O2 → H2O 電荷を運ぶイオンは炭酸イオン(CO3-)である。 アノード極はポーラス金属ニッケル、カソードはポーラス酸化ニッケル(NiO)。 |
ら行
用語 | 解説 | |
リン酸型燃料電池(PAFC) | 分散可搬型および定置型燃料電池として最も普及している。中程度の温度(150〜200°C)。電荷キャリアー(H+)や電極反応は固体イオン交換膜型と同じ。 |
わ行
A〜Z
用語 | 解説 | |
AEM | anion exchange membrane の略。アニオン交換膜のこと。OH-の移動が可能。 | |
AFC | alkaline fuel cell の略。アルカリ燃料電池。アルカリ性電解質を用いる。キャリアーイオンは水酸化物イオン(OH-)。 | |
AMFC | anion exchange membrane fuel cell の略。アニオン交換膜を用いるアルカリ燃料電池。 | |
CHP | combined heat and power の略。発電にともなう熱エネルギーを有効利用してエネルギー利用効率を上げる仕組み。コジェネレーション。略してコジェネともいう。高温燃料電池(SOFC、MCFCやPAFC)において有効に適用される。 | |
DEFC | direct ethanol fuel cell の略。燃料のエタノールを直接、アノード酸化反応に使う燃料電池。キャリアーイオンはプロトン。電解質膜にPEMFCに使うのと同じものを使用する。 | |
DMFC | direct methanol fuel cell の略。燃料のメタノールを直接、アノード酸化反応に使う燃料電池。キャリアーイオンはプロトン。電解質膜にPEMFCに使うのと同じものを使用する。 | |
EOR | ethanol oxidation reaction の略。直接エタノール燃料電池のアノード極におけるエタノールの酸化反応のこと。 | |
GDE | gas diffusion electrode の略。ガス拡散電極のこと。 | |
ICE | internal combustion engine の略。内燃機関。燃料を燃焼させて回転エネルギーとして動力を発生させる機械。燃料電池との対比で燃料電池の話によく出てくる。 | |
LFFC | laminar flow fuel cell の略。ミクロ流体型燃料電池。小型駆動用電源としての開発が最近活発化している。 | |
LSM | lanthanum strontium manganite の略。ストロンチウムをドープしたマンガン酸ランタン(LaMnO3)。酸素還元の電極としてSOFCの正極に用いられる。電子伝導体である。 | |
MCFC | molten carbonate fuel cell の略。溶融炭酸塩型燃料電池。キャリアーイオンは炭酸イオン(CO3-)。 | |
MEA | membrane electrode assembly の略。膜−電極−複合体。PEMFCなどで、固体交換膜とそれに接合された触媒−電極の一体化されたもの。 | |
MOR | methanol oxidation reaction の略。直接メタノール燃料電池のアノード極におけるメタノール酸化反応。 | |
ORR | Oxygene Reduction Reaction の略。正極(カソード)で起こる酸素の還元反応。 | |
PAFC | phosphoric acid fuel cell の略。リン酸型燃料電池。キャリアーイオンはプロトン。 | |
PEFC | polymer electrolyte fuel cell の略。高分子電解質燃料電池。 | |
PEMFC | proton exchange membrane fuel cell または polymer electrolyte membrane fuel cell の略。プロトン交換高分子膜型燃料電池。キャリアーイオンはプロトン。 | |
SAFC | solid alkaline fuel cell の略。高分子電解質膜(アニオン交換膜)を使うアルカリ燃料電池。炭酸ガスによる影響の軽減のために最近活発に研究が進められている。 | |
SOFC | solid oxide fuel cell の略。固体酸化物(ジルコニアやセリア;ジルコニウムやセリウムの酸化物)を電解質とする燃料電池。最も高温(750°C〜1000°C)仕様。 | |
TPB | three phase boundary の略。3相界面、触媒、気相、電極が接する界面。SOFCの場合はNi極、YSZ、気相の3つの相が接する界面を意味し、燃料の酸化が効率よく進行する場所となる。 | |
YSZ | yttrium stabilized zirconia の略。イットリウム添加により安定化したジルコニア。高温で酸素イオン伝導体として用いられる固体電解質。バンドギャップが大きいので電子伝導性は無視できる。SOFCに用いられる。 |